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大きなカメラ

2020.09.02

8月30日。

今年の夏休みはいつもより短いが、ここ最近の夏休みも8月いっぱい休みでなかった様子。だけど今でも僕の夏休みの意識は8月いっぱい。宿題も8月いっぱいにやればいい。当たり前に紙芝居口演できる日々が、2月の末頃から大きくつまずいて、久しぶりの紙芝居の復帰できたのが7月の終わり。この数ヶ月で世界は大きく変わり、顔の半分が見れなくなった。

信念も貫きたいが、世間に殺されぬよう、抑えるべきところは抑えようと、今も口うるさく言われるルールを僕ら紙芝居屋も、口うるさく、そして楽しく伝える。小さな画面に肩寄せ合いマイク使わず笑い合うことはできない。人との距離を開けて、マスクをつけて。

そんなルールをお客さんに求めるように、演者である僕もしっかり楽しく守ろうと、たくさんを一度手放した。マスクをつけて、人数制限を設けて、人と人との距離をあけて、掛け合いをやめて、トイレ行った後も手を洗うよう心がけて。少し捨てるならいっそ、もっと捨ててしまおうと、昔から貫いていた自転車に舞台乗せるのもやめて、水あめ、カタヌキ、景品、クイズもなし。これは紙芝居屋にも向けられたたくさんの注文。

皆を包んできた紙芝居小屋からも離れ、風通しの良い大きなホールを竹林に。ここでも難しい注文。ホールは地域の方達も使う場所。だから、口演後はコンパクトに片付ける。それも全て叶え、望んだ紙芝居。週末のみの、1日2回、お客さんの数だって限られてる。もっと多くの人に見てもらいたのに、このたくさんの汗流したスタイルはこの8月いっぱいでおしまい。

生前、師匠ヤッサンが動けばマスコミさんが大きなカメラ持ってやって来てくれていた。幼い頃からそれが当たり前の光景だったけど、大人になって僕の気持ちを見抜いた師匠が、「ありがたいことのんだぞ、当たり前に思うなよ」と。

僕は絵を描き、紙芝居をする。それ以外に色々なんてできなくて、師匠のように大きなカメラを呼び寄せる力なんてない。僕らの頑張りはこの竹林の中だけで終わるでなくもっと発信したいのに。そこでまた力を貸してくれたのは、師匠だった。師匠にカメラを向けていた人との繋がりで、最終日大きなカメラがやって来て、僕らの頑張りと工夫を流してくれた。正座して観るテレビの前、あっという間だったけど、僕らの頑張りが目の前に居ぬ多くの誰かにも見てもらえた。ありがたい。

最終日口演終え、片付けをする前、この日まで頑張った、らっきょむと二人で倒れ込む。竹林も竹でできたいくつかの部屋ともさようなら。いつも中途半端な僕だけど、しっかりやり切れたって思えた。らっきょむが「ビール飲みたいな」って。お酒が全く飲めないんだから雰囲気でもの言うなよ。立ち上がったら雪駄が壊れた。この夏、一緒によく頑張ったもんな。お疲れサマー。

翌日、東京に向かった。
1年間匿名で葉書送った東京のある寺に向かった。さぞ気持ち悪かっただろう。叱られるかも。10年前、僕が弟子入り覚悟して最初に見た師匠の紙芝居。弟子入り覚悟した僕はたくさんのエネルギー集まるお客さんに、それに一人で立ち向かう師匠に尻込みした。

出頭するような気持ちでおそるおそる入る、社務所。テーブルに積み上げられた400枚近くの葉書。10年前を覚えてくれていたお坊さん。最初は何かと思ったけど、しっかり想いは届いていた。笑顔もらえた。僕も師匠と同じようにこの地に立って紙芝居がしたい。浅草寺。

背伸びしてもまだ足りない身の丈に合わぬ夢をずっと夢見てきた。目指す舞台は大きい方がいい。帰り際、お坊さんが僕にプレゼント。新しい雪駄をもらった。しかも、右も左もセットで。

この夏も子どもらに負けず成長できたかな。
これでまた九月からも強く踏み出せる。九月。マンガミュージアムでもまた新しいスタイルに挑戦し、中頃から紙芝居再開です。

大きなカメラで取材していただいた様子はこちらでご覧ください。
NHK NEWS WEB