9年間、一緒に暮らしたぼんまる。
おはようからおやすみまで休むことなくやらかしまくるぼんまる。
厳しくすると「もっと優しく」「大きな愛で包んでやって」と言われて、逆のことをすると「過保護」と言われる。
どの人にも当てはまる接し方、育て方なんてきっとない。
ぼんまるはどこにも当てはまらない人間。
僕だってそうだ。 誰だってそうだ。
叱ると自虐的になり、「僕みたいなド底辺な人間は」と腐る。
褒めると舞い上がり、調子に乗り、つけ上がる。
イラッとくる。
「可愛いじゃない」
なんて、わかったつもりの聖母マリアも口ばかり。
ムカッとくる。
素敵なことわざ、語呂のいい言葉並べたがるいいこと言いたがりの口臭に吐き気する。
「頑張らなくていい」「大丈夫」
なんて無責任に頭にくる。
紙芝居を学びたいとやって来て11年。
師匠ヤッサンがいなくなっても僕のそば。
出て行ってくれない。
そんな、ぼんまるを家から出して2度目の冬。
去年に続き、クリスマスイブ。 今年も飯時狙ってやって来た。
ボンタクロース。 ヨレヨレの赤い服と作業履。
この日のために描いたのか、ぬきうち紙芝居。 頼んでないし、見たくもないのに見なきゃ行けないのは背中に背負う大きな白い袋。
紙芝居とプレゼントもらった僕らより、本人が一番の笑顔して帰っていった。
家の鍵開けっぱなしにしてるからこうゆうことになる。
世界で一番貧相なサンタが帰った数分後、入れ替わるように、ぼんまるがやって来た。
こんな夜に来なくていいのにその分、皆のケーキは薄くなる。
「家に帰してやれ」
「まずは金を稼がせろ」
「甘やかすな」
「イライラするな」
「無理だって」
「もっと普通の生き方を」
「意地張るな」
「だから言ったでしょ」
散々言われて来たが、どうだ。
ちゃんとスクスク育っている。
これからもきっとずっとこの日、一緒に食べるケーキ。
プレゼントにもらった、うまい棒プレミアムセットよりずっといいものを僕はもらった気がする。
師匠、父、ヤッサンタクロースが授けてくれたプレゼント。 紙芝居。
そして残された何人かの弟子。
その一人、ぼんまる。
父が向き合った者と向き合って来た事で、今夜また父の心がまた一つ知れた。
来年。来月で正月の一月。
そんな、ぼんまるの紙芝居が見たいと横浜川崎市、ぼんまる紙芝居依頼。
年末年始なんて言ってらんない。
まだまだ続く、ぼんまると僕の旅。
これこらもきっともっとずっとやらかすんだろけど、それはお互い様。 だけど、僕らは眩しい未来を信じてる。
今夜こそは本物の赤服とっ捕まえてやると、寝ずに待機中。